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日本フォレンジック会計協会設立趣意書
近年、フォレンジック会計の重要性が世界的に増大しており、不正行為の特定と防止、訴訟手続の支援、財務報告の透明性と信頼性の向上において重要な役割を果たしています。一方で、日本では、会計不正の調査、株式価値算定、責任追及訴訟、営業損害など、法律と会計にまたがる案件や業務が拡大しています。しかしながら、日本においてはフォレンジック会計の発展と活用を推進する統一的な組織がまだ設立されておらず、その必要性が高まっています。このような状況を踏まえ、日本フォレンジック会計協会（Association of Forensic Accounting in Japan: AFAJ）を設立する運びとなりました。本協会は、学術関係者、専門家、ステークホルダーが協力し、フォレンジック会計に関する知識および先進事例の共有を図り、専門家間の知見共有ネットワークを形成することで、フォレンジック会計を日本に普及させるとともに、会計不正のない社会構築を促進するプラットフォームを提供することを目的としています。
日本フォレンジック会計協会のミッションは、日本におけるフォレンジック会計の理論と実践を推進するとともに、法律と会計の業務的分野を横断的に解説する学問領域を確立し、財務報告の信頼性を向上させることです。そのため、専門家が、専門知識を有して不正防止と発見を行うことを支援する役割を担います。また、民事訴訟、刑事訴訟、非訟、契約交渉、組織再編・M&A、倒産処理、企業不祥事の調査・対応などの分野において、会計および税務の知識が必要とされる案件や業務では、会計専門家が法律専門家と協働します。本協会ではそれらの要点を整理し、共通理解を深めることを目指します。本協会のビジョンは、フォレンジック会計の研究と実践においてアジアを代表する組織となり、企業のガバナンスにとって不可欠な要素となる環境を醸成することです。
本協会の活動内容としては、フォレンジック会計手法の採用を推奨し、不正検出・防止の標準手続きとして活用を支援します。民事訴訟においては、会計専門家が営業損害算定に必要な情報を収集・提供し、説得力のある文書を作成することで、弁護士の主張立証を補完し、裁判官の心証形成に影響を与える役割を担うことを推進します。さらに、営業損害の算定に関する理論と実務については、管理会計や損害論（法律学）の基礎的な知識を含む解説を行い、弁護士や裁判官などの法律専門家が理解を深められるよう支援します。本協会は、このような法律と会計の協働分野における知識と実務を推進することで、調査サービスおよび訴訟支援サービスの発展にも寄与します。
本協会は、こうしたフォレンジック会計の実践の推進、専門的な研修プログラムや資格認定を提供し、大学との連携を強化して教育、技術や事例研究を推進します。また、実務家の課題解決を支援する研究開発をすすめ、専門家間の知見共有を促進し国際的な連携を促進するネットワークを構築します。さらにフォレンジック会計の重要性を啓蒙し、透明性と倫理的財務報告開示の実践を支援する政策を提言する社会啓発活動もいたします。
本協会は、学術関係者、専門家、企業および公共部門の代表者で構成される理事会によって運営され、教育、研究、提言を担う分科会を設置します。以上から、日本フォレンジック会計協会の設立は、会計不正への対処能力を強化し、企業のガバナンスを向上させる重要な一歩となります。高度な専門性を持つ人材を育成し、先進的な実践を促進することで、財務環境の健全性と透明性に寄与します。本協会は、すべてのステークホルダーの皆様と共に、会計不正のない社会構築のためのフォレンジック会計の未来を切り拓いていきたいと考えています。
文京学院大学教授・大学院教授 中島 真澄
片山法律会計事務所代表弁護士・公認会計士 片山 智裕
コンチェルト経営アドバイザー代表 荻野 好正
協会概要
ロゴ：ロゴの意味
沿革
理事・役員
中島真澄（なかしま・ますみ）
文京学院大学経営学部教授・大学院経営学研究科専攻主任・教授。1994年南山大学大学院経営学研究科博士後期課程単位取得。博士（経営学）。明治大学経営学部・経営学研究科兼任講師、マレーシア工科大学大学院国際ビジネススクールPh.D. Program共同指導教授。アジアパシフィック管理会計学会常務理事。2017年度科学研究費補助金審査委員表彰。
また、2025年1月に「財務諸表不正推定装置、財務諸表不正推定方法及びプログラム」で特許 （7621608）取得している。
Professor and Chair, Graduate School of Business Administration, Bunkyo Gakuin University. Dr. Nakashima holds both an MBA and a Ph.D. in Business Administration from Nanzan University. She also serves as Adjunct Professor at Meiji University and Co-Supervising Professor of the Ph.D. Program at Universiti Teknologi Malaysia. She is an Executive Board Member of the Asia-Pacific Management Accounting Association (APMAA) and a recipient of the 2017 JSPS Research Committee Commendation. Her major publications include Quality of Earnings and Corporate Governance and Forensic Accounting: Integration of Accounting and Corporate Legal Practice. In 2025, she was granted Japanese Patent No. 7621608 for “Fraudulent Financial Statement Estimation Apparatus, Method, and Program.”
片山智裕（かたやま・ともひろ）
片山法律会計事務所代表弁護士・公認会計士。1994年司法試験合格、1995年東京大学法学部卒業、1997年東京地方裁判所・裁判官に任官し、裁判実務経験を積む。2003年退官して弁護士登録、本間合同法律事務所パートナー、監査法人（旧中央青山監査法人）の実務経験を経て、2007年公認会計士登録、弁護士業務を中心に据えて現在に至る。
Representative Partner, Katayama Law and Accounting Office. Mr. Katayama passed the National Bar Examination in 1994 and obtained his LL.B. from the University of Tokyo in 1995. He served as a judge at the Tokyo District Court before becoming a partner at Honma Law Firm and practicing at the former Chuo Aoyama Audit Corporation. His expertise lies in forensic accounting and corporate legal practice. He co-edited Forensic Accounting: Integration of Accounting and Corporate Legal Practice (Hakuto-Shobo) and authored Chapters 6 and 7.
荻野好正（おぎの・よしまさ）
1973年静岡大学工学部卒、1975年同大学院工学修士終了、1984年シカゴ大学ビジネススクールMBA取得。伊藤忠商事（株）勤務。海外向け電力プラントの営業、プロジェクトマネジメントなどに従事の後、業務部（経営企画）、米国法人CAO（Chief Administrative Officer）を務めた。2004年より、曙ブレーキ工業（株）に勤務、取締役などののち代表取締役副社長CFO。2019年同社退任後、現在コンチェルト経営アドバイザー代表、（株）XIBシニアアドバイザー、（株）アールティ取締役など。
President, Concerto Management Advisors; Senior Advisor, XIB Corporation; Director, RT Corporation. Mr. Ogino earned his MBA from the University of Chicago Booth School of Business after completing a Master’s in Engineering at Shizuoka University. He held key management positions at Itochu Corporation and Akebono Brake Industry Co., Ltd., where he served as Executive Vice President and CFO. His recent works include “Yellow Flags in Corporate Operations” (Accounting Association Journal, 2021) and Chapter 3 in Forensic Accounting: Integration of Accounting and Corporate Legal Practice.
石岡修（いしおか・おさむ）
片山法律会計事務所・弁護士、税理士。2004年弁護士登録。2010年東京大学公共政策大学院修了（専門職修士）。2018年University of London, SOAS修了（L.LM）。2010年から国際協力機構（JICA）、ラオス法律人材育成強化プロジェクト、長期専門家。2018年から国連難民高等弁務官（UNHCR）駐日事務所勤務。2020年から国税不服審判所、審判官。
Attorney-at-Law and Certified Tax Accountant, Katayama Law and Accounting Office. Mr. Ishioka holds an LL.M. from SOAS, University of London, and a Master’s in Public Policy from the University of Tokyo. He has served as a legal expert for JICA’s Legal Human Resource Development Project in Laos, worked with the UNHCR Representation in Japan, and currently serves as an Examiner at the National Tax Tribunal of Japan.